ドラゴンクエスト11の時間に対するストーリー考察を行ってみたいと思います。今回の記事はネタバレが多く含まれており、裏ボスまで倒してからでないと、楽しみが大きく減ってしまいますので閲覧には注意してください。ちなみに私の個人的な考察が多く含まれていますので、一つの考え方くらいで認識してもらえればと思います。
ストーリーの流れ
序盤~中盤にかけては割愛しますが、
- ベロニカが死亡してしまう
- ウルガーノを倒す(表のエンディング)
- 時を巻き戻し、ベロニカ生存ルートへ
- ニズゼルファを倒す
- セニカが時を巻き戻す
- 裏エンディング
となっています。今回は、時間の概念を中心にいろいろ考察していきたいと思います。
この世界の未来はどんなタイプか?
未来、過去を扱う上で重要になってくるのがその概念です。
- パラレルワールド型
- 一本道型
- 上書き型(巻き戻し型)
などどの概念が当てはまるかということで最終的な結果としては大きく変わってきます。まずは型によって最終的なストーリーがどう変わってくるかを確認してみます。(他にも概念があるかもしれませんが私はこれしか知りません・・・)
パラレルワールド型
一般的な考え方で、多くの物語ではこのパラレルワールドという概念で未来過去を語ります。制作上、どんな状況になっても「パラレルワールドだから」の一言で何とでも言えるためということもあるでしょう。パラレルワールドとは、未来や過去に行き、歴史を変えてしまった場合、何もしなかった世界と、歴史を変えた世界の二つが生まれてしまうという概念です。どんなに過去を変えても、もともとの世界は変わらず、変える事に成功した世界だけが変化するという感じですね。何度も変えようとするなら、その分だけ世界線が増えていくということになります。
もしドラクエ11の世界がパラレルワールド型だったとすると、世界は、
- ベロニカが死に、主人公が過去る世界
- 主人公がベロニカを救い、セニカが過去に戻る世界
- セニカが過去の勇者を救う世界
この3つの世界が生まれるということになります。一番考えやすい世界ではありますが、ベロニカが死に、主人公もいなくなった世界というものも残ってしまいます。ドラクエシリーズがどろどろした世界観でダークな部分も魅力な一つというゲームであるならばそれもありかもしれませんが、どちらかというと逆で、ハッピーエンドを望むタイプのゲームかと思います。そんな中、救われない世界があるというのは寂しいものです。しかし、本作では個人的な見解としてパラレルワールドではないと思っています。それについては下記に書きます。
一本道型
一本道型は、未来を変えるために過去に戻ってもそれすらも一本の世界線に含まれているというものです。自分が自分の子供の頃に会いに行き、プレゼントを上げたとすると、それは既に自分が子供の頃にもらっているというものですね。
この概念の場合、ゲーム的につじつまが合わなくなります。通常ルートの途中で過去の自分に人格をのっとられたということになってしまいますし、そうなるとそもそもあの場でベロニカは死なないということになります。ということでこの概念はないかと思います。
上書き型(巻き戻し型)
ストーリー上、過去を巻き戻すことが出来るのは資格を持っているものだけとされています。勇者が時間を巻き戻すと勇者は記憶を保持することが出来るわけですが、主人公以外にとっては、これまでのことが全てなかったことになってしまうということです。ベロニカが命を賭して守った事実も、これまでの修行の流れも、築き上げた思いでも全てベロニカが死ぬ前に戻ってしまうということです。戻した本人は記憶が残るので問題ありませんが、仲間はもちろん、プレイヤーとしても、「これまでの冒険はなかったことになるのか」と考えると非常に寂しい気持ちになります。そして個人的には、この未来過去の概念が当てはまりそうな気がしますが、それはそれで問題もあります。次に何故当てはまるかということを書いていきます。
ポイントはかすかに残った記憶
主人公が過去に戻った後、冒険をしていると、仲間に「昔こんなことがあったような気がする」ということを発言します。ここがポイントになるかと思っていますが、ここから先は、私の勝手な考察でそうではないと言われる方もたくさんいるでしょう。その辺は一つの考え方と捕らえてもらえればと思います。
もしパラレルワールドだとすると、過去に戻った先で仲間が以前の記憶を維持しているのはおかしいと個人的に考えています。一本道はありえないので、可能性として有り得るのは、巻き戻しの場合記憶を深いところで消しきれなかったという部分があるのかなと感じています。このことにより、ドラクエ11の世界は上書き型、巻き戻し型なのではないかと思っています。
上書き型の問題点
ここまでの話なら、上書き型で別にハッピーエンドではないかと思ってしまいますが、問題はニズゼルファを倒した後です。時の番人はセニカに戻り、今度はセニカが時間を巻き戻します。こうなると話は大きく問題となります。上書き型なら、セニカが巻き戻すことによって今回の主人公が歩んできな道、そのものがなくなってしまいます。過去の勇者が殺される前まで時間が戻ってしまうのですから。これはかなり問題かと思います。現実世界での話であればそれもまた一つという感じもしますが、あくまでも今回はドラクエ11のメンバーでゲームをしてきたわけです。これがなくなるというのはちょっと待って欲しいと感じてしまいますよね。しかし、上書き型で話を進める以上、このまま話を進めていきます。
ドラクエ11はセニカのサイドストーリー?
セニカが最終的に時間を巻き戻すことが出来たということで話を進めると、過去勇者、ローシュの物語の内、セニカに話を絞ったサイドストーリー的な位置づけと考えることが出来ます。ドラクエ11の世界を中心に見ているのでこの結末に納得がいかないわけですが過去の勇者サイドから見てみれば、
- ローシュが殺される
- セニカが時間を巻き戻そうとするが失敗
- 後の世界で未来の勇者がセニカの呪いを解く
- セニカが時間を巻き戻す資格を手に入れる
- 時間を戻して勇者を救う
こう考えると非常にまとまっているし、過去の勇者視点で考えると納得のいく結末なのかもしれません。また今作の最後の最後にドラクエ3の冒頭部分につながります。未来の勇者の流れではなく、過去の勇者の流れで「ロト」という言葉が生まれたとも考えられます。さらには過去の勇者はドラクエ3の勇者とデザインが似ています。仲間も含めて。今作の勇者はちょっと勇者っぽくないですよね。私は好きですが。そういう意味でも、ドラクエ11は、過去勇者のストーリーの中でも、セニカに絞ったサイドストーリーなのではないかと思っているわけです。
時間は戻っても無駄ではない?
ではこれまでの冒険が無駄だったのかという話ですが、そうとも言い切れません。仮にセニカのサイドストーリーということにしましょう。すると、
- 過去勇者が死ぬ
- セニカが過去に戻ろうとするも失敗→時の番人に
- 勇者不在→長い年月が経ち、今回の主人公登場
- 冒険中にベロニカ死亡
- ウルガーノ撃破
とまずはこの流れになります。ここでもしベロニカが死亡しなかった場合、時を戻そうとはしなかったでしょう。となれば、時の番人の秘密や、ローシュ達の詳しい過去も分からなかったかと思います。ニズゼルファはこの段階の平和な世界では復活しないのではないでしょうか。次に裏ストーリーへ進みます。
- 今作主人公が時間を巻き戻し、現在をなかったことにする
- ニズゼルファが復活する
- ニズゼルファの秘密を探る
- ローシュたちの過去を知る
- ニズゼルファを撃破する
- セニカを元に戻す
- セニカが時間を巻き戻し、現在をなかったとことにする
- 過去勇者、ローシュを救う
ニズゼルファと対面することで過去勇者、ローシュたちのことも深く知ることが出来たわけですし、時の番人がセニカだったということも分かります。今回の主人公はこの過去を変えなければならないと思ったのかもしれません。
ポイントはベロニカの死亡
ポイントはベロニカが死んでしまうところにあります。ベロニカが死ななければ過去に戻らないということを考えると、セニカはずっと元に戻れませんし、過去のローシュたちを救うことが出来ません。ベロニカが死ぬことでここまでストーリーが動き出し、ローシュを助けるところまでたどり着けたということになります。そう考えると、ベロニカの死はセニカのサイドストーリーとしての位置づけとして考えるとかなり重要ではあるが、ベロニカが復活した後にも時間を巻き戻すのであればそれすら全く知られない努力だったということになるのかもしれません。セニカが唯一記憶を保持して過去に戻っていますが、どこまで今作の主人公たちのことを理解しているかという部分は分かりません。
今回の主人公の役目
では今作の主人公の役目は何だったのでしょうか。これまでの流れで話をするなら、ローシュが殺され、勇者が不在になった世界で、もう一度勇者を蘇らせるために生まれた勇者。と考えられるかもしれません。今作の勇者はセニカを復活させた後、勇者の紋章を彼女に渡します。これで勇者の力を渡したことになると思うのですが、その時点で今作の勇者は勇者ではなくなってしまったのかもしれませんね。勇者の力がそんなに簡単に渡せるのかは疑問ですが。だから、結果的にはウルガーノやニズゼルファを倒してきた今作の勇者ですが、本来の目的は、
「セニカに勇者の力を渡し、過去を変えてもらうこと」
という役目だったのかもしれません。
最後に
色んな見解があると思いますし、何か一つでも「これはどうだったの?」といわれると、一気に覆ってしまいそうな考察ではありますが、現時点で私の個人的な見解としてセニカのサイドストーリーという位置づけて認識しておこうと思っています。今後、何か面白いポイントがあり、この流れが大きく覆るようであれば、そのときにそれを受け入れていこうと思います。しかし非常に単純に見えたドラクエ11をここまで考えさせてくれるというのは非常に面白いですよね。ゲームも考察も本当に楽しかったです。